マウントアダプターとフランジバックについて

マウントアダプターとフランジバックの関係や、
マウントアダプターの品質についての説明です。


1.マウントアダプターとは

2.フランジバックについて

3.アダプターの厚さについて

4.アダプターの精度(厚さ・平行度)

5.アダプターの品質(内面反射・装着感・堅牢性)



1.マウントアダプターとは  

レンズ交換式カメラには、レンズとカメラの間に接合部があり、レンズ交換が可能になっています。
この接合部は、マウント部などとも呼ばれ、各メーカーで規格化された 『マウント規格』 により製作されています。




35mm判レンジファインダーでは、ライカスクリューやMマウント、
35mm判一眼レフでは、M42、ペンタックスPK、キヤノンFDやEF、ニコンF、・・・・・。
ミラーレスカメラではソニーαE、フジX、マイクロフォーサーズ、・・・・・。
中判カメラ用や最近登場した中判ミラーレスデジカメ用など数多くの『マウント規格』 があります。

『マウント規格』 は、レンズとカメラボディの接合部の形状やフランジバック寸法などが厳密に規定されていて、異なる 『マウント規格』 間では互換性が無く、取り付けて使用することは出来ません。

マウントアダプターは、
異なるマウント規格 のレンズとカメラボディの間に入れて使用するもので、本来取り付け出来ないレンズとカメラ間での互換性を大きく広げるアイテムです。



マウントアダプターを使うことにより、お気に入りのレンズとこだわりのカメラを組み合わせたり、思い出のフイルムカメラで使っていたレンズを最新式のミラーレスカメラと組み合わせるなど、多彩な撮影方法をお楽しみ頂けます。

  




2.フランジバックについて

フランジバックとは、カメラボディのマウント面(レンズを取り付ける面)から、センサー面(フィルムカメラの場合はフィルム面)までの距離のことで、『マウント規格』 ごとに厳密に決まっています。
レンズやカメラボディのフランジバックは、『マウント規格』 に従い高精度で製作されています。
純正の組み合わせでも、フランジバックに誤差や、がたつきがあると、無限遠のピント精度に狂いが出たり、片ボケ写真(画面の上限や左右でボケ具合が異なる)になる等、描写に影響がでる重要な部分です。


・フランジバック寸法(目安)
 中判カメラ(ブローニー版) ・・・ 60〜80mm 台
 35mm版一眼レフカメラ ・・・ 40mm 台
 35mm版レンジファインダーカメラ ・・・ 20〜30mm 台
 ミラーレスカメラ ・・・ 10〜20mm 台


【例】PKマウント(ペンタックスPK)とSαEマウント(ソニーαE)のフランジバック





3.アダプターの厚さについて

アダプターの厚さは、組み合わせるレンズとカメラボディのフランジバックの差によって決まります。

レンズのフランジバック − ボディのフランジバック

= 
アダプターの厚さ


【例】 PKマウントのレンズをソニーαEマウントボディに取り付ける場合

PKマウントのフランジバック  SαEマウントのフランジバック 

 アダプターの厚さ  になります。



ミラーレスカメラには、35mm判一眼レフにあるミラーを収めるミラーボックスが無いため、ミラーレスカメラのフランジバックは35mm判一眼レフの半分程度の厚さになります。
このため、ミラーレスカメラ用アダプターは十分な厚さを確保出来るので、豊富な組み合わせが製作可能です。

最近では、35mm判フルサイズセンサーを搭載したミラーレスカメラが普及してきたため、ミラーレスカメラとアダプターを組み合わせて使用される方が大変多くなっています。



4.アダプターの精度(厚さ・平行度)

アダプターは、組み合わせるレンズとカメラボディの『マウント規格』 に高精度で合致している必要があります。
アダプターの厚さや平行度に狂いがあると、レンズ本来の性能(描写)を引き出すことができなくなります。
特に、ピントリングを最短から無限遠まで回転した時、レンズ全長の変化が少ないレンズ(広角レンズ)ほど、アダプターの厚さ(誤差)が無限遠精度や距離目盛精度に与える影響が大きくなるので注意が必要です。



【アダプターの厚さ

厚さが高精度のアダプターを使用すると、レンズの∞マークと実写の無限遠が高精度で一致します。
また、厚さが高精度なほどレンズの距離目盛と、実際のピント位置までの距離が一致します。

●アダプターの厚さが規定値の場合
 機材:コンタックス プラナー 50mmF1.4(絞りf2)、ソニーα7U
※レンズの無限遠がズレている場合(レンズ個体差)、撮影結果が下記と異なる場合があります。



・距離目盛∞マークで撮影 
 無限遠にしっかりとピントが合っています





・カメラから3mのチャートを距離目盛3mで撮影
 3mの位置にあるチャートにしっかりとピントが合っています





●アダプターの厚さが狂っているとき(規定値 マイナス 0.2mm の場合)
 
機材:コンタックス プラナー 50mmF1.4(絞りf2)、ソニーα7U


・距離目盛∞マークで撮影

 
レンズの無限遠を通り越しているため、無限遠にピントがあいません。
 (無限遠よりも遠くにピントが合った状態です)




無限遠にピントを合わせて撮影
 距離目盛を無限遠から戻しています、この組み合わせでは10m強の位置でした。



・カメラから3mのチャートを距離目盛3mで撮影
 チャートのある3mに距離目盛を合わせてもチャートにピントが合いません。


・チャートにピントを合わせて撮影3m
 距離目盛を近距離側に戻しています。





【アダプターの平行度】
アダプターの、レンズ側マウント面とカメラボディ側マウント面の平行度が出ていないと、レンズとセンサー面(フィルム面)の光軸がずれてしまいます。
光軸ずれが発生すると片ボケ写真(画面の上下や左右でボケ具合が異なる)の原因となります。

●アダプターに傾きが無い場合
 機材:コンタックス プラナー 50mmF1.4(絞りf2)、ソニーα7RV
※レンズの無限遠がズレている場合(レンズ個体差)、撮影結果が下記と異なる場合があります。

・中央部にピントを合わせて撮影しています




●アダプターに傾きがあるとき( 0.2mm の傾きがあるアダプターの場合)
 機材:コンタックス プラナー 50mmF1.4(絞りf2)、ソニーα7RV

・中央部にピントを合わせて撮影しています
 傾きの無いアダプターで撮影した写真に比べ、画面中央部の写りは同等ですが、画面左側のボケが大きい傾向です。





5.アダプターの品質(内面反射・装着感・堅牢性)

●内面反射
カメラのミラーボックスの内壁は、出来るだけ内面反射が少ない事が理想です。
ミラーボックス同様、レンズからの光が通過するアダプターも、内面反射対策が重要です。
ツヤ消し処理、遮光線加工等を丁寧に行うと、本来のレンズ性能をより引き出すことが出来ます。


●装着感
アダプターにレンズやカメラボディを取り付ける際、純正の組み合わせに近い感触で装着、脱着できることが理想です。
やわらか過ぎると、マウント部にガタが発生してレンズ光軸が下方にズレて描写に影響が出たり、レンズやカメラボディから外れてしまう可能性があります。
固すぎると、レンズやカメラボディから取り外せなくなる可能性があります。


●堅牢性
アダプターは、大切なレンズやカメラボディを取り付けて使用する重要なパーツです。
材質やメッキ処理などの表面処理がしっかりしていることや、各パーツ強度に余裕があることで安心してお使いいただけます。
三脚座付きアダプターの場合は、使用時にガタが発生しないこと(アダプター本体と脚座がしっかり固定していること)が重要です。

デジタルカメラの高画素化に伴い、アダプターの精度が撮影結果に影響しやすくなっています、安心してお使い頂ける高精度アダプターをお勧めします。


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